小学生でも わかる はじまりから、
療育の現場で 実践できる かたちまで、
3つの ステップで 紐解いていきます。
じつはね、ひとの 手と あたまは、つながっているんだよ。 だから、文字を 目で 見ているだけより、自分の 手で つくったものは、ずっと わすれにくいの。
ねんどで「あ」を つくって、
ゆびで さわって、
こえに 出して 「あ」って いう。
この3つを 一緒に やると、あたまの 中で 「あ」の形と 音が、ぎゅっと くっつくんだ。 そうすると、こんどから「あ」を 見たとき、ぱっと 読めるようになるよ。
これが、この サイトで お話する 「ぜんぶの きほん」。 むずかしいことは、これから ちょっとずつ お話していくね。
形と 音を つなぐ。
ぜんぶの 土台。
単語を ひとまとまりで 読めるように。
教えなくても 自分で 読めるように。
⋯⋯ ⋯⋯ ⋯⋯
最初は、ひと筆で書ける、形が シンプルな 文字から はじめます。 子どもが「できた!」を 何度も 味わえるところから。
1セッションで 2〜3文字。同じ文字を 何回か繰り返してOK。
線が ふえたり、カーブが むずかしくなる グループ。 「い」と「り」のように 形が 似ている文字を 同じ日に 並べて 作ると、ちがいに 気づきやすい。
画が 多くて、組み立てが むずかしい 文字。 ここまで来ると、子どもは 粘土と 文字に だいぶ なじんでいる はず。
50音表を 見たとき、1文字ずつ なら 声に 出せるようになったら、STEP 2 へ。
手拍子で「パン・パン」と 2回 たたける 短い単語から。 身近な もの ばかりで、絵カードと 組み合わせるのが ポイント。
少し 長い 単語へ。「あ・ひ・る」のように 3つの 音の かたまりを、ひとつの 言葉として 認識する 練習。
「手拍子1回ぶんの 音」のこと。 「あ・ひ・る」は パン・パン・パン で 3モーラ。 「らーめん」は パン・パン・パン・パン で 4モーラ。 ひらがな 1文字=1モーラが ほぼ ぴったり 合うので、ひらがな学習で とても 大事な 単位です。
意味と モチベーションが 一番 強い 単語。子どもが「自分のこと」を つくる 時間は、特別な 学習になります。
2〜3文字の 単語が、1文字ずつ ではなく まとまりとして 読めるようになったら、STEP 3 へ。
単語と 単語を つなげて、短い 文を 作ります。「主語+好き/きらい/好きな○○」の シンプルな 形から。
粘土を 卒業して、絵本・看板・お便り・お菓子の 袋など、生活の中の 文字を 読んでみる 段階。
読めない 文字に 出会ったら、それを 持ち帰って STEP 1 で 粘土で 作る。 「現実 → 粘土」の 行き来が、学びを 深める。
最終地点。粘土も、台紙も なくても、目で 見ただけで 文字を 読める ようになる。 ここまで 来ると、読みの「自動化」が 始まっています。
ここまで 来たら、ひらがなは「使う 道具」になります。 絵本を 自分で 読み、メモを 書き、ふだんの 生活の 中で 文字が 自然に なる。 そこから、その子なりの 新しい 世界が 広がっていきます。
この 3ステップは、思いつきや 経験則だけではなく、世界の 認知科学・脳科学・特別支援教育の 研究で 確かめられてきた 原理に 基づいています。
就学前の子どもを 対象にした fMRI 研究で、文字を 自分の 手で 作った 子だけが、後で 文字を 見たときに 大人の 文字認識ネットワーク(左紡錘状回)が 活性化することが 示されました。 なぞりや タイピングでは 同じ 効果が 出ません。
James & Engelhardt, 2012手で 触れた 形と、目で 見た 形は、脳の 共通の 領域(LOC〜紡錘状回)で ひとつの 立体的な イメージに 統合されます。 だから 触ると、視覚的な 記憶が より 強くなります。
Nishino & Ando, 2008 / 触るグリフ 製品資料米国の Ron Davis が 1982年に 体系化した「Davis Symbol Mastery」では、ディスレクシアの 児童・成人が 粘土で アルファベットや 単語を 立体的に 作ります。 世界各国に 認定ファシリテーターが いる、確立した 手法です。
Davis, 1982 / Carson & Sorin, 2014-2018京都大学発の「触るグリフ」(立体文字シート)を 用いた 臨床研究で、読み書き困難児 8名中 7名で 読み流暢性が 向上し、呼称速度(RAN)の 著しい 改善が 報告されました。 「見ながら 触れて 音読する」が 鍵。
宮﨑ら, 2025 / 認知神経科学 Vol.26Orton-Gillingham法(1930年代〜)、Fernald VAKT法(1920年代〜)、Montessori 砂文字板など、 視覚・聴覚・触覚・運動感覚を 同時に 動員する「多感覚法」は、ディスレクシア支援の 国際的な 主流。
Orton-Gillingham, Fernald, Montessori日本語の ひらがなは「1文字=1モーラ」で ほぼ 対応しています。 手拍子で モーラを 意識し、それを 粘土文字と 結びつけることで、音韻認識と 文字認識が 同時に 育ちます。
海津, 多層指導モデルMIMステップや レベルは どこにいても、1回の セッションは 基本的に この 流れで 進めます。 所要時間の目安は 10〜20分。1セッションで 1〜3文字(または 1単語)が 適量です。
その日に やる 文字を 1つ 提示します。文字カードと、その音から はじまる イラスト(例:「し」→シカ)を セットで 見せます。
これは"し"です。シカの "し"。さわってみよう。子どもに 音を 反復してもらいます。声に 出すことで、聴覚回路を 起こします。
"し"。なんの "し"?(→シカ)。じゃあ、つくってみよう。手の準備運動と、触覚の ウォームアップ。粘土を 転がす だけでも 集中スイッチが 入ります。
線つき台紙の上に 粘土ひもを 置いて、文字の 形を つくります。難しい場合は 指導者が 1画目だけ 手添えで 見本を 示します。
完成したら、子どもに 指で 粘土の上を なぞらせます。なぞりながら 音を 発します。「見ながら、触れて、音読する」がこの 学習の 一番 大事な ところ。
形を ゆびで たどってみよう。"し"。もう一度、文字・イラスト・音を 並べて、形・音・意味を ひとつに します。
これは "し"。シカの "し" だね。同じ 流れで、その日の 2〜3文字目を 行います。集中力が 切れる 前に やめるのが ポイント。
最後に、その日 作った 文字を 文字カードだけ(粘土なし)で 提示して、読めるか 確認します。これが 学習の 定着度を 教えてくれる 指標になります。
これ、なんて 読むかな?
「見ながら、触れて、音読する」
この 学習は、文字の はじまりに つながる 行為で あり、
視覚や 聴覚は 触知覚から 派生したからこそ、
「触れる」事で、言葉を 形に 結び付けたのでしょう。
― 触るグリフ 製品資料 より(宮﨑圭佑, 2025)