CLAY × HIRAGANA

ねんどで
ひらがなを まなぼう

小学生でも わかる はじまりから、
療育の現場で 実践できる かたちまで、
3つの ステップで 紐解いていきます。

INTRO

なんで ねんどで ひらがな?

じつはね、ひとの 手と あたまは、つながっているんだよ。 だから、文字を 目で 見ているだけより、自分の 手で つくったものは、ずっと わすれにくいの。

ねんどで「あ」を つくって、
ゆびで さわって、
こえに 出して 「あ」って いう。

この3つを 一緒に やると、あたまの 中で 「あ」の形と 音が、ぎゅっと くっつくんだ。 そうすると、こんどから「あ」を 見たとき、ぱっと 読めるようになるよ。

1 手で つくる
2 👆 ゆびで さわる
3 👄 こえに 出す

これが、この サイトで お話する 「ぜんぶの きほん」。 むずかしいことは、これから ちょっとずつ お話していくね。

ROADMAP

3つの ステップで すすむ

STEP 1
1文字を 作って
触れて 読む

形と 音を つなぐ。
ぜんぶの 土台。

STEP 2
並べて
単語を つくる

単語を ひとまとまりで 読めるように。

STEP 3
いろんな 場所の
文字へ ひろげる

教えなくても 自分で 読めるように。

⋯⋯ ⋯⋯ ⋯⋯

1
1文字を 作って、触れて、読む
ねらい: ひらがな1文字の「形」と「音」を、手と目と耳で つなぐ。 これが この学習の すべての 土台になります。
LEVEL 1 / 3

かんたんな 1画もじから

最初は、ひと筆で書ける、形が シンプルな 文字から はじめます。 子どもが「できた!」を 何度も 味わえるところから。

🟫 やりかた

  • 線の入った台紙の 上に、粘土の ひもを 置いていく
  • 完成したら、ゆびで 粘土の 上を なぞる
  • なぞりながら 「し」「つ」と 声に 出す

🟫 1回の目安

1セッションで 2〜3文字。同じ文字を 何回か繰り返してOK。

LEVEL 2 / 3

2画 / 形が 少し むずかしい 文字

線が ふえたり、カーブが むずかしくなる グループ。 「い」と「り」のように 形が 似ている文字を 同じ日に 並べて 作ると、ちがいに 気づきやすい。

🟫 ポイント

  • カーブが むずかしい子は、まず ひも状にする 練習から
  • 「ぐるっと まわるよ」など、形を 言葉で 説明しながら
  • 線つき台紙で うまくいったら、枠だけの 台紙に フェード
LEVEL 3 / 3

3画以上 / 複雑な 文字

画が 多くて、組み立てが むずかしい 文字。 ここまで来ると、子どもは 粘土と 文字に だいぶ なじんでいる はず。

🟫 ここで 大事なこと

  • 1画ずつ「何画目だね」と 一緒に 数えながら
  • 順番が 大事な 文字は、画ごとに 色を 変えても よい
  • うまく形にならなくても OK。「自分で作った」事実が 大事

🟫 STEP 1 を 終えるサイン

50音表を 見たとき、1文字ずつ なら 声に 出せるようになったら、STEP 2 へ。

2
粘土文字を 並べて、単語を つくる
ねらい: 1文字ずつ 確かめなくても、単語を ひとまとまりとして 認識できるように。
LEVEL 1 / 3

2モーラの 短い単語

手拍子で「パン・パン」と 2回 たたける 短い単語から。 身近な もの ばかりで、絵カードと 組み合わせるのが ポイント。

🐕
いぬ
2モーラ
🌙
つき
2モーラ
👟
くつ
2モーラ
🌸
はな
2モーラ

🌿 やりかた

  • 絵カードを 見せて「これは 何?」と 問いかける
  • 「い」と「ぬ」の 粘土文字を 並べる
  • 並べた 単語の 上を、ゆびで 一気に なぞりながら「いぬ」と 読む
LEVEL 2 / 3

3モーラの 単語

少し 長い 単語へ。「あ・ひ・る」のように 3つの 音の かたまりを、ひとつの 言葉として 認識する 練習。

🦆
あひる
3モーラ
🌸
さくら
3モーラ
🐈
ねこ
2モーラ
🥁
たいこ
3モーラ

🌿 モーラって なに?

「手拍子1回ぶんの 音」のこと。 「あ・ひ・る」は パン・パン・パン で 3モーラ。 「らーめん」は パン・パン・パン・パン で 4モーラ。 ひらがな 1文字=1モーラが ほぼ ぴったり 合うので、ひらがな学習で とても 大事な 単位です。

LEVEL 3 / 3

自分の名前 / 家族の名前

意味と モチベーションが 一番 強い 単語。子どもが「自分のこと」を つくる 時間は、特別な 学習になります。

👦
じぶんの
なまえ
本人
👩
ママ /
パパ
家族
🐕
ペットの
なまえ
大切な存在

🌿 ここで 起こること

  • 「自分の 名前」が ひらがなで 読める=自尊心の 大きな きっかけ
  • 意味と 音と 形が、感情ごと くっつく(=記憶が とても 強い)
  • 濁音・半濁音(が、ば、ぱ)に 自然に つながる(子どもの名前に よくある)

🌿 STEP 2 を 終えるサイン

2〜3文字の 単語が、1文字ずつ ではなく まとまりとして 読めるようになったら、STEP 3 へ。

3
いろんな 場所の 文字へ ひろげる
ねらい: 教材の中だけでなく、生活の中の どんな 文字でも 自分で 読めるように(=汎化)。
LEVEL 1 / 3

みじかい 文を つくる

単語と 単語を つなげて、短い 文を 作ります。「主語+好き/きらい/好きな○○」の シンプルな 形から。

🍞
ぱんが すき
🐈
ねこが いる

🌊 やりかた

  • 子どもの 好きなものから 文を つくる(モチベーション◎)
  • 助詞(が・を・は)を 意識する 機会にも なる
  • 作った 文を、誰かに 読んで聞かせる(社会的な 完成)
LEVEL 2 / 3

生活の中の 文字を 読む

粘土を 卒業して、絵本・看板・お便り・お菓子の 袋など、生活の中の 文字を 読んでみる 段階。

🌊 試してみる 場所

  • 絵本の タイトル / 単語
  • 家の中の 文字(冷蔵庫、お菓子の 袋、家族の メモ)
  • 道の 看板 / お店の 名前
  • 連絡帳 / 園のお便り(自分の名前を 探す)

🌊 むずかしいときは

読めない 文字に 出会ったら、それを 持ち帰って STEP 1 で 粘土で 作る。 「現実 → 粘土」の 行き来が、学びを 深める。

LEVEL 3 / 3

触らなくても 読める

最終地点。粘土も、台紙も なくても、目で 見ただけで 文字を 読める ようになる。 ここまで 来ると、読みの「自動化」が 始まっています。

🌊 ここで 起こること

  • 1文字ずつ 拾い読みする「逐次読み」が 減る
  • 読むことが 疲れなくなる(=易疲労性の 改善)
  • 文字を 見たときに、ぱっと 音が 浮かぶ(=呼称速度の 向上)
  • 読書や 学習に 向かう モチベーションが 育つ

🌊 これは ゴールではなく スタート

ここまで 来たら、ひらがなは「使う 道具」になります。 絵本を 自分で 読み、メモを 書き、ふだんの 生活の 中で 文字が 自然に なる。 そこから、その子なりの 新しい 世界が 広がっていきます。

SCIENCE

なぜ これで うまくいくのか

この 3ステップは、思いつきや 経験則だけではなく、世界の 認知科学・脳科学・特別支援教育の 研究で 確かめられてきた 原理に 基づいています。

① 自分の手で 作ると、
脳が 文字を「自分のもの」にする

就学前の子どもを 対象にした fMRI 研究で、文字を 自分の 手で 作った 子だけが、後で 文字を 見たときに 大人の 文字認識ネットワーク(左紡錘状回)が 活性化することが 示されました。 なぞりや タイピングでは 同じ 効果が 出ません。

James & Engelhardt, 2012

② 触覚と 視覚は
脳の中で 統合される

手で 触れた 形と、目で 見た 形は、脳の 共通の 領域(LOC〜紡錘状回)で ひとつの 立体的な イメージに 統合されます。 だから 触ると、視覚的な 記憶が より 強くなります。

Nishino & Ando, 2008 / 触るグリフ 製品資料

③ 粘土を 中核とした
古典的な指導法が 存在する

米国の Ron Davis が 1982年に 体系化した「Davis Symbol Mastery」では、ディスレクシアの 児童・成人が 粘土で アルファベットや 単語を 立体的に 作ります。 世界各国に 認定ファシリテーターが いる、確立した 手法です。

Davis, 1982 / Carson & Sorin, 2014-2018

④ 日本でも
触読学習の効果が 確認

京都大学発の「触るグリフ」(立体文字シート)を 用いた 臨床研究で、読み書き困難児 8名中 7名で 読み流暢性が 向上し、呼称速度(RAN)の 著しい 改善が 報告されました。 「見ながら 触れて 音読する」が 鍵。

宮﨑ら, 2025 / 認知神経科学 Vol.26

⑤ 多感覚法は
100年の 蓄積がある

Orton-Gillingham法(1930年代〜)、Fernald VAKT法(1920年代〜)、Montessori 砂文字板など、 視覚・聴覚・触覚・運動感覚を 同時に 動員する「多感覚法」は、ディスレクシア支援の 国際的な 主流。

Orton-Gillingham, Fernald, Montessori

⑥ モーラを 意識すると
単語が 読めるようになる

日本語の ひらがなは「1文字=1モーラ」で ほぼ 対応しています。 手拍子で モーラを 意識し、それを 粘土文字と 結びつけることで、音韻認識と 文字認識が 同時に 育ちます。

海津, 多層指導モデルMIM
PRACTICE

1セッションの 流れ(実践フロー)

ステップや レベルは どこにいても、1回の セッションは 基本的に この 流れで 進めます。 所要時間の目安は 10〜20分。1セッションで 1〜3文字(または 1単語)が 適量です。

  1. 提示する

    その日に やる 文字を 1つ 提示します。文字カードと、その音から はじまる イラスト(例:「し」→シカ)を セットで 見せます。

    これは"し"です。シカの "し"。さわってみよう。
  2. 音を 一緒に 出す

    子どもに 音を 反復してもらいます。声に 出すことで、聴覚回路を 起こします。

    "し"。なんの "し"?(→シカ)。じゃあ、つくってみよう。
  3. 粘土を ひも状にする

    手の準備運動と、触覚の ウォームアップ。粘土を 転がす だけでも 集中スイッチが 入ります。

  4. 形を 作る

    線つき台紙の上に 粘土ひもを 置いて、文字の 形を つくります。難しい場合は 指導者が 1画目だけ 手添えで 見本を 示します。

  5. 触りながら 読む(=この活動の 核)

    完成したら、子どもに 指で 粘土の上を なぞらせます。なぞりながら 音を 発します。「見ながら、触れて、音読する」がこの 学習の 一番 大事な ところ。

    形を ゆびで たどってみよう。"し"。
  6. イラストと 統合する

    もう一度、文字・イラスト・音を 並べて、形・音・意味を ひとつに します。

    これは "し"。シカの "し" だね。
  7. 次の 文字へ(2〜3文字 繰り返し)

    同じ 流れで、その日の 2〜3文字目を 行います。集中力が 切れる 前に やめるのが ポイント。

  8. 想起チェック(=評価)

    最後に、その日 作った 文字を 文字カードだけ(粘土なし)で 提示して、読めるか 確認します。これが 学習の 定着度を 教えてくれる 指標になります。

    これ、なんて 読むかな?

「見ながら、触れて、音読する」
この 学習は、文字の はじまりに つながる 行為で あり、
視覚や 聴覚は 触知覚から 派生したからこそ、
「触れる」事で、言葉を 形に 結び付けたのでしょう。

― 触るグリフ 製品資料 より(宮﨑圭佑, 2025)